
最近ニーズが高まりつつある「陸上養殖」。閉校を活用してアワビやウニ、トラフグなど魚介類を育てる地域づくりを多く見かけるようになりました。そこで、海の王様でもある「あわび」に着目して、陸上であわびが育つ海水や給餌、目や口など面白い雑学をご紹介します。
目次
陸上養殖で育つあわびの環境とは
人工塩ではなく天然の海水で育てるコツ
あわびを育てる養殖場が海から離れた場所だと、人工塩に頼ってしまいがちです。人工塩のデメリットは単価が高いですが一方で、無菌で水道水と人工塩を溶かせば誰でも手軽に作れるメリットがあります。しかし、養殖施設の規模が大きい場合、人工塩の費用は莫大な額で経営者を悩ませる引き金になっています。
そこで、天然の海水を使えないか検討していくことがほとんど。
沿岸の傍であれば、沿岸から直接ポンプで海水を引き上げる方法もありますが、問題は海から離れた陸上で養殖している場合ですね。沿岸から離れた陸上に天然海水を運ぶ方法は一つで、海水運送専用タンクローリーで海水を運ぶしかありません。
天然の海水をあわび養殖に使うためには次のようなポイントがあります。海から汲み上げてきた海水を直接あわびが育っている養殖槽に入れないようにしましょう!
- 沿岸から汲み取った海水は冷暗所で保管する
fa-arrow-right植物プランクトンが光合成できずに沈殿するので上澄みをあわび養殖槽に引き込む - 水温をあわびの適水温に合わせ、酸素濃度を上げる
fa-arrow-right海水の温度を養殖槽の海水温と同等に調整する - UV滅菌機で海水の雑菌を死滅させる
fa-arrow-right海水には常在菌であるビブリオ菌が存在しているため
半閉鎖的循環で、きれいな海水を維持することが大切
あわびはキレイで流れる海水が大好きヽ(o'∀'o)ノ
キレイな海水とは、窒素(N)やリン(P)などの富栄養化していない海水のことです。沿岸の海水をあわびの養殖に使う場合、近くに排水口があって家庭排水が流れていないか、近くで養殖が盛んに行われていないか、閉鎖湾で海流が留まっていないかなど注意しなければならい環境的要因があります。
また、銅イオンが含まれている海水は、あわびには不向きなので、近くに漁船や漁協があると船や埋め込み式の機械が錆びて溶け出す物質にも注意する必要があります。
- 窒素(N)やリン(P)が少ない海水
- 家庭排水が流れていないこと
- 近くに養魚場がないこと
- 閉鎖湾で海流が留まっていないこと
生存率が高い水温管理は13.0~18.0℃
あわびの種類は、エゾアワビが主流です。なぜなら、エゾアワビは病気に強く成長がよく養殖に向いているためです。
さてさて、「エゾ」といえば、蝦夷=北海道のイメージですね!!養殖されているほとんどのあわびの種類はエゾアワビで、故郷は寒い地域の東北地方です。そのため、水温は18℃以下が最適水温と言われています。18.0℃以上になるとあわびの病気の一つでもある「キセノハリオチス感染症」の発症確率が上がってしまう傾向があります。餌の食べつきや増肉係数、病気の予防の観点から水温は13.0~18.0℃が最適です。水温を維持するために、冷水器やクーラーで海水温と気温を調整し空調管理する必要性がでてきます。
- 蝦夷あわびは寒い海域で生育する北方系原産地のため
- 病原菌の増殖を防ぐため
- 餌の食べつきがよく増肉係数をあげるため
「陸上であわびを育てるってコツがいるんだな~」と分かっていただいたところで、よく寄せられるあわびについての質問ベスト3の解説は次の通りです。
あわびのQ&Aベスト3お答えします
あわびの雄雌は肝の色で判別できる
よく言われていたことが、「あわびって、タニシみたい!!!んーー!!カタツムリに似ているかも」
確かに、気持ちは分かる!ぅん((゚ω゚* )ぅん.!
そんなあわびですが、雄雌の区別がちゃんとついています。
あわびの雄雌の区別が簡単に分かる方法は、肝の色なんです。
緑色の肝だとメス。黄色の肝だとオス。
fa-bullhorn肝の色が緑色だと雌
fa-bullhorn肝の色が黄色だと雄
今度、あわびを食べるときにはメスなのかオスなのか話題にできちゃいますね。
あわびは夜行性だから、日中動きが鈍い
再び言われる質問が「あわびってなんで動かないの?」
あっ。確かに動いていない! ( ゚д゚) 。_。)ウンウン!
その理由を明確に答えると「あわびは夜行性で、明るいところが苦手だから。」
あわびの養殖場が薄暗い理由は、あわびは光があるとストレスなんです。だから、赤目ライトを使ってあわびができる限りストレスを感じさせないようにすることが養殖のコツですね。 暗くなるとあわびって活発的なんです!餌を求めてよく動き回ります。面白いことに動き回ったら、また自分のテリトリーの場所に戻ってくるんですよ(笑)あわびには縄張りと自分の固定の居場所が決まっています。
あわびには口と目がちゃんとある
最後に、動かないあわびを指さして「あわびってお口とお目めはどこにあるの?」という質問。
次の写真で解説しておきますね!
一見は百文に如かずです。
口が分かりにくいので裏返して確認してみましょう!
餌を食べる様子でもわかる通り、ワカメをキャッチした後はゆっくり食べていきます。
驚くことをもう一つ!!あわびって自分の糞を食べてしまうと死んでしまうんです。それほど、キレイ好きみたいですね。
最後に
あわびはあまり動かないし、底生生物だから養殖するのが簡単そう!と思われがちですが、実は魚より神経質で適した養殖環境のもとでないと、すぐに天国に行ってしまうんです。
あわびって、ちゃんと感情を持っているんですよね!
食卓にあがる機会の少ないあわびですが、あわびについてのお話でした。
おしまい。