紫陽花の剪定をする際に、枝のどの位置をどんな角度で切ったらいいのという疑問にお答えします。樹木にとって枝を切られることは、手術されるのと同じですので正確な剪定をする必要があります。正確な剪定とは、どんな切り方がよいのかを知ることです。剪定した枝の約1年後も元気に育っている写真も掲載しています。今回、紫陽花の枝の剪定で切り口が早く塞がり、剪定した枝が枯れないための切り方をお伝えします。
正しい剪定後の枝の状態
先ずは剪定して数カ月もしくは1~2年経過したよい枝の状態をご紹介します。
剪定の良し悪しで枝のその後の寿命が変わってきます。最初に知って欲しいことは、正しい剪定をした場合、切られた枝はその後どのようになるのかです。写真を載せますネ。
剪定後、よい状態で成長ができている枝は
カルスを形成します。
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切り口の周囲にカルスができ始めたら、
徐々にカルスが切り口覆って蓋をします。
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fa-asteriskカルスとは、人で例えると傷口にできる瘡蓋(かさぶた)です。植物は切り口にカルスを作ることで、切った傷口から菌(木材腐朽菌)が侵入するのを防ぎ、樹木を守っています。この剪定後の枝の状態になることを目指して剪定をします。では、正しい剪定とは枝のどの位置を切ればよいのかを解説していきますね。
正しい剪定の位置
下の写真(車枝の写真)をご覧ください。
以前「剪定をすべき枝の一つに車枝がある」ということを紹介した記事に載せた写真です。是非、読んでいただきた記事なので関連記事で案内しますね。
車枝を取り除くときに
どの位置で切ったらよいでしょうか?
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基本は、取り除きたい枝のすぐ一つ下の分かれ目である分岐枝を確認し、枝の向きや細さ、樹冠のバランスなど見極めていきます。
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剪定する箇所を紫色の矢印で指しています。
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剪定枝が決まったら、次はいよいよ剪定です。
どのような切り口になるように切ればよいのかを確認しましょう。
剪定の角度
剪定を失敗させないコツは、枝を切る角度と枝のどこに切り込みを入れるの2点です。枝や株を枯らさず、樹木の回復を早くする切り方がポイントです。具体的に写真で解説をしていきます。
キーワード ブランチカラー
知って欲しい用語が一つあります。それは「ブランチカラー」です。ブランチカラーは主幹と枝の境界線にある膨らんでいるところのことです。ブランチカラーは構造上、主幹の一部として取り扱われます。このブランチカラーは防御層と呼ばれる組織を含んでいて、切り口にいる腐敗菌をブロックして主幹に菌が主幹に新入することを防ぐ役割があります。
次の写真をご確認ください。実際に写真でブランチカラーがどこにあって、目で見た時にどんな部位なのかをご説明します。
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②のライン(黄色の丸点線)が主幹と枝の境目です。少し膨らみがあり、構造的に①のライン(赤色の丸点線)から先端に向けて枝と位置付けられています。①と②の間がブランチカラーと呼ばれる部分です。そして、このブランチカラーを残すように剪定をします。ブランチカラーは主幹の一部なので、主幹をキズつけないように、防御層を残してあげます。切り口から菌が侵入してきてもカルスが形成されるまで防御層で菌をブロックします。
ブランチカラーを無視して剪定をした時の失敗した枝の写真です。
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Y字の中央の出っ張りはカルスを形成できずに、先端部分が委縮するようにしぼんでいます。巾着袋の紐を絞った感じに似ていますね。切り方を失敗して傷口がキレイに塞がらず、切った痕が残っています。この症状から樹木があるメッセージを残しているのが分かります。ブランチカラーの膨らみです。つまり、①のライン(赤丸の点線)で切って欲しかったことが判断できます。
話をもとに戻して、ブランチカラーを意識して剪定した後の切り口を写真で確認していきましょう。
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さて、ここで分かる良い知らせが1つあります。
「剪定を失敗した枝の確認」をご紹介したY字枝の中央にある出っ張り(巾着袋を閉めているかのように絞りがあるところ)の腐敗が幹に進んでいないことが分かります。もしかしたら今回の切り口では確認ができない可能性もありますが、腐敗菌の侵入がなかったかもしくは、ブランチカラーで主幹へのブロックを防いでいるのではと想定されます。剪定を失敗した枝もキレイに切りなおしてもよいのですが、車枝の剪定で枝を切った切り口の様子を観察したいことや1本に同時に数カ所も傷口をつけてしまうと樹力が弱ってしまうことも考えられますので、今回の剪定はココまで。それに、紫陽花は株立性低木の特性から、幹が古くなったらその幹を枯らして、新しい枝に更新して株の存続を維持していきますので、更新するまでの間生きていける状態であれば株自体に問題はないわけです。
切り口には、保護剤を塗布して、腐敗菌が漂う空気と接しないようにシャットアウトして病原菌の侵入を防ぎます。同時に乾燥を防ぎ、雨に含まれる菌からも枝を保護します。
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塗布している保護剤はこちらを使用しています。
殺菌作用の効果が高いです。
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最後に樹木の全体像を載せます
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(追伸:2021年11月3日-剪定約1年後の枝)
約1年後・翌年10月の剪定後の枝が枯れたのか、生きているのかの結果をご報告します。
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最後に
(まとめ)
紫陽花は、花終わりと落葉後の年に2回、適切な剪定の時期があります。その時に枝のどこを切るの判断が必要です。今回は冬の2段階剪定のためカルス形成を意識した剪定のコツをご紹介しました。
花終わりの剪定は、枝がまだ若くブランチカラーの区分が難しいため枝が分かれている付け根できるより、中間で切る方がよい場合もあります。それは、乾燥を少しでも幹の髄の方に進行するのを遅らせるためです。遅らせるという表現の中には、冬の2段階剪定や枝の更新までその枝を維持するための時間稼ぎとして、乾燥しても大丈夫な枝を残しているニュアンスが大きいですね。
枝の生き死にを左右する剪定は慎重に行いたいですね。
おしまーい。