ウイルス性胃腸炎って何?という疑問の回答になる記事をまとめました。病院で「ウイルス性胃腸炎」と診断されて、それって「食あたり」とか「お腹が痛くてどこもいけないときの症状」とはちょっと違うの?って疑問になったことってありませんか。今回、ウイルス性胃腸炎とはどんな区分なのか、そして診断された事例や症状、登園の目安についてお答します。
目次
ウイルス性胃腸炎について
ウイルス性胃腸炎って何?
ウイルス性胃腸炎とは、ロタウイルス(Rota virus)やノロウイルス(Noro virus)、アデノウイルスなどのウイルスによる感染病です。少し具体的にお伝えすると感染症胃腸炎という大きな枠組みがあり、さらにウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎に分類されます。「食あたり」とか「お腹が痛くてどこもいけないときの症状」も大枠でまとめると感染症胃腸炎の一つの症状で診断されます。
ノロウイルス
症状は吐き気、おう吐、下痢、発熱、腹痛であり、小児ではおう吐、成人では下痢が多いです。潜伏期間は平均1~3日で秋から春にかけて流行します。
ロタウイルス
症状はおう吐、下痢、発熱であり、乳児ではけいれんを起こすことがあります。特に、ロタウイルスの場合、酸っぱい系のクリーム色から白色の下痢から徐々に水下痢になっていきます。潜伏期間は平均5~6日。冬から春にかけて流行します。感染症胃腸炎の中で、唯一予防薬としてワクチンの接種ができます。
アデノウイルス
症状は、胃腸炎や嘔吐などさまざまあり50タイプに分かれることもあります。主な症状は、発熱(4~5日の高熱)、咽頭炎(喉が痛くてご飯を食べられない)、眼症状(目ヤニやかゆみ)です。結膜炎の症状も発症すると咽頭結膜熱(プール熱)と呼ばれます。潜伏期間は平均5~7日。
感染源
感染源は、病原体が付着した手を口に入れたり、調理員の指や爪に付着した菌が食べ物についたりする接触感染や病原体が付着した食品を食べることによる経口感染が多いです。そのため、しっかり手洗いうがいをする習慣が対策の一つとなっています。
潜伏期間
潜伏期間は、病原体により異なります。
ウイルス名 | 潜伏期間 |
ノロウイルス | 1~3日 |
ロタウイルス | 5~6日 |
アデノウイルス | 5~7日 |
症状
ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスと各ウイルスによって症状と異なりますが、ウイルス性胃腸炎はウイルスが胃腸に潜り込んで悪さをするため、胃→嘔吐、腸→下痢の症状がでます。別名「おなかのかぜ」「はきくだし」「嘔吐下痢症」ともいわれ、主な症状は下痢と嘔吐です。下痢が始まるまでは胸がムカムカし吐き気があり一番つらい体調ですが、下痢をし始めると嘔吐や胸のムカムカも治まってきます。発熱や嘔吐は1~2日間で治まり、下痢は1週間くらいでよくなると言われていますが、赤ちゃんだと長引く傾向があります。回復後、1~2週間は便に菌が排出されます。
治療法
特別な治療法がないため、自然治癒力で回復していきます。脱水を防ぐためにこまめな水分補給を心がけ、安静にして過ごします。
処方薬
処方薬は風邪を引いた時に処方されたお薬と同じ種類が処方されることがあります。ウイルス性胃腸炎は治療法がありませんが、整腸剤を内服するときもあります。
腸の働きを助ける薬
・【プランルカストDS10%】
気管支の収縮を抑える薬
・【五苓散エキス顆粒】(今回だけ処方)
悪心、はきけを抑える薬、急性胃腸炎を和らげる薬
感染予防のポイント
手洗いで予防
・石鹸を使って手洗いをしっかりする。
→特に液体石鹸が推奨されている
・手洗い後のタオルは共用せずに個人用もしくはペーパータオルを利用する
食中毒の予防
・貝類は湯通しだけはウイルスは死滅しないので、しっかり加熱する。
・野菜、果物などの生鮮食品は水道水で十分に洗う。
・台所用品は洗剤で洗い熱湯消毒する。
嘔吐物・便の処理
・便や嘔吐から飛沫感染しやすいため、処理を適切に行う。
検査をしない理由
ウイルス性胃腸炎におけるどの病原体においても特別な治療方針や特効薬はないため、特段病原体の種類を解明する必要性がありません。ウイルス性胃腸炎を一括りとしての症状に応じた治療が行われる点や処方薬や気を付けることがどの病原体でも同じになります。検査をしても迅速検査ではウイルスの型や量によっては偽陰性となりウイルスの特定や断定ができないことがあり、地域や家族、保育園の流行状況や臨床的に診断する場合もあります。小児科では治療方針を変える可能性が低い病原体の検査は、子どもに負担がかかるので積極的に行いません。インフルエンザや溶連菌感染症など、検査の結果で治療の仕方や処方薬が変わる病気は、子どもに負担がかかっても検査する傾向があります。
・地域や家族、保育園の流行状況
・子どもへの検査負担を軽減するため必要以上に検査をしないため
ウイルス性胃腸炎と診断された事例
ウイルス性胃腸炎に感染しても元気
昼食後に下痢(12時頃)
おやつ後に下痢(15時頃)
・元気で顔色もよい
・食欲はあり
・水分はとれる
・遊んで機嫌がよい
病院受診で「ウイルス性胃腸炎」と診断
保育園での体調不良を小児科の主治医に伝えると検査をすることなく、水便を1日3回していることから季節的に秋から冬に流行する「ウイルス性胃腸炎」と単刀直入で診断されました。ただ、今回の場合は「水便のみ」だいぶ症状が軽いウイルス性胃腸炎とのことでした。
・発熱がない
・水便のみ
・食欲がある
・機嫌がよい
・元気がある
登園の様子
ウイルス性胃腸炎と診断された翌日は保育園をお休みし、診断後3日目より保育園に通うことができました。今回は、水下痢のみとウイルス性胃腸炎の症状が軽かったため、治りも早く、同じ感染者と比較すると割かし早めに登園できたのではと考えれます。1日目は水下痢を3回、療養をしていた2日目は軟便から水便ぐらいの便を1回し、3日目は普段通り登園し、便は一度もしませんでした。そして、4日目になって通常のよい便をすることができました。
登園日の子どもの体調は、食欲もあり元気に保育園に通い1日保育ができましたが便をしなかったという結末でした^^しかし、その他、何事もなく通常保育で過ごせたようでした。
登園の目安
園によって基準は異なりますが、主治医による登園や登校の目安は次の3つでした。
② 24時間 嘔吐がない
③ 24時間のうち下痢が1~2回/日程度
感染後の登園基準
ノロウイルス感染症は、登園許可証が必要になります。
登園できる基準とは、「下痢と嘔吐が治まり、通常の食事が摂れること」で、その判断は「親の判断」です。
医者の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症
感染症名 感染しやすい期間 登園のめやす ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス等) 症状のある間と、症状消失後1週間(量は減少していくが数週間ウイルスを排出しているので注意が必要) 嘔吐、下痢等の症状が治まり、普段の食事がとれること
最後に
(体は強くならない!免疫力が高まるだけ)
幼い子どもの体調不良は毎週、何か起きるから、ママやパパも「まだ小さいし、体力もないから疲れたのかな。」と子どもの体調不良に慣れやこのぐらいは大丈夫と安易に自己判断をせずに、経過をみながら病院を受診しましょう。もしかしたら、感染症の疑いや病気が隠れていて、適切な処方をすることで早く完治することができるかもしれません。
「風邪を引くたびに、そんなして子どもは体が強くなる」と言われることがありますが、それは免疫力が高まるだけで「体が強くなる」と同一の意味ではありません。体調不良の時は、子どもが早く元気になり、1日でも健全な体調と健やかな心で過ごせるように努めることが子育ての責務ですね。
おしまーい。