妊娠前感染を願って受診したIgG抗体アビディティ値の結果と診断

トキソプラズマ抗体検査で陽性がでれば、「トキソプラズマアビディティ検査」を行い、感染した時期を見定めていきます。今回の記事は、トキソプラズマ感染症における第2回目でIgG抗体アビディティ値の結果を聞きに受診をしたお話になります。トキソプラズマIgG抗体アビディティとは何を調べる検査なのか、その数値の意味、陽性疑いの最終結果はどうだったのか、胎児への影響、今後の治療方針について主治医から聞いた経験談をまとめます。

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IgG抗体アビディティ

検査内容-結合率-

IgG抗体のアビディティは、抗体の結合率を調べる検査で、ウイルスや細菌などに過去に感染したかを調べる検査とも言えます。この検査は、抗原抗体反応を利用し「抗体の状況を把握していく」ものです。

ここで抗原と抗体のお話を簡単にしますね!

抗原抗体反応とは
ウイルスや細菌(抗原)が体内に侵入して感染したら、攻撃するためにタンパク質(抗体)が作られます。抗体は抗原をつかみ取りキャッチ(結合)することで、抗原は活性を失い消失していきます。
では次に、この検査で「抗体の状況を判断していく」とはどういうことなのかをご説明します!
抗体は進化する
感染直後(抗原が浸入した時)に作り出された抗体は、抗原の情報がつかめないのでどんな抗体がよいのか模索中なんです。抗原が浸入した初期は、結合できない抗体もおおい(≒結合率が低い)とか。感染後、時間の経過とともに抗体は抗原の情報(情報を例えば凸凹とする)を知り、抗体はその情報に似合うたんぱく質にあるように変化していきます。つまり、抗原の凸凹に合致する凸凹を持てるような抗体を産出するように進化するんです。その抗体の進化は感染した時から時間が経つほど、強くなっていくようです。強くなるという意味は、いろんな凸凹の形を持つ抗原と結合できるように時間をかけて進化し、バージョンアップしていくとのこと。そうすることで、どんな凸凹を持つ抗原でもキャッチ(凸凹の結合)ができその抗原の活性を消失させていくんです。つまり、強い抗体=抗原の結合率の高い抗体に進化していくんです。
ということで、感染から時間が経つと抗体の状態が変わってくるんです。箇条書きでまとめます。
抗原の状況
感染から時間が経っていない:抗体と抗原の結合率が弱い
⇒抗体が抗原の情報を分析できていないので、抗原をピックアップし結合できない
感染から時間が経過:抗体と抗原の結合率が強い
⇒時間をかけることで抗体が抗原の情報を分析し、いろんな抗原をピックアップし結合できるようになっている
IgG抗体のアビディティ検査は、IgG抗体の結合率(%)を調べることで、感染からだいぶ時間が経っているのか、感染からまだ間もないのかを知ることができる検査なのです。

時間が経っている場合、抗体の結合率が高くなるという意味は、その経過した時間分、攻撃部隊としてしっかり免疫力を向上させているということなんですね!
では次に、アビディティ値の基準値やその基準値が何を意味しているのかをまとめます。

感染時期-基準値-

アビディティの値(%)が高いほど、抗体の機能が働き、どんな抗原にも対応できるようになっているということ。つまり、感染時期から時間が経っているアビディティ値(%)=結合率(%)は高数値になってきます。

ではアビディティの値の基準をお伝えします。(検査会社によって基準値は異なり差があります)

アビディティ基準値
0.4~0.5(40~50%)
⇒1年以内の感染
0.5~0.6(50~60%)
⇒1年前の感染

さて、次の確定診断の結果をご紹介する前に、アビディティ検査を受ける前のトキソプラズマ抗体値がどのくらいの値だったのかなどを知っていただきたいので、関連記事のご紹介をしますね。

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トキソプラズマ抗体陽性の疑いと診断されたときの抗体値を公表しています!抗体のIgMとIgGの意味や値の移り変わり(抗体価変動模式図)、陽性の数値から想定される感染時期などをまとめています。

 

確定診断

アビディティ値の結果

では、アビディティ検査を受けた時の結果を発表します!

15週目アビディティ値の数値
トキソプラズマ抗体値
IgM:0.4
IgG:187
アビディティ値
0.64 ⇒ 64%
IgG抗体値が’187’と高い値にも関わらず、アビディティ値も’64%’と高い値でした。
主治医が一番、最初にこう伝えてくださいました。

アビディティが0.67(60%以上)で高数値なので、妊娠前の感染で、トキソプラズマ感染から1年以上経過しているので安心して大丈夫です。今回の妊娠に関係なく、トキソプラズマ感染を気にすることはないです。
安心と伝えられても不安と疑問が多いので質問をしたことをQ&Aにまとめます。

Q&A

体内にトキソプラズマはいるの?

トキソプラズマ抗体IgGが187と高い値ということはまだトキソプラズマがいるから数値が高いのかと思っていましたが、実はそうでもないようです。アビディティ検査の値「67%」の結果より、免疫を持っている状態で現時点で体内にトキソプラズマはいないとのことでした。IgGも初期検査の数値より下がってきていることや、IgMも数値が同じで一定していることも含めて主治医は判断をするようです。

アビディティ値は変動するの?

検査する会社によってアビディティ値が変化するなら、もう一度調べたら、今の数値「67%」が変わってきて低値と判断されることもあるのではと不安になっていましたが、主治医の話ですと、アビディティ値が今の検査より大きく変動することはない、2回目の測定で下がることはないとのことでした。またアビディティの数値は確率で表示されますが「100%」や「0%」という数値は存在せず、最初の値は「0.3~0.4(30~40%)」から始まるとのこと。

高値・低値の基準は?

アビディティ値は確率を表し感染期間を想定して目安ですが、どの数値であればどの時期・期間に感染したのかをどう判断しているのかについて質問しました。すると、感染から1年以上経っているか、それとも、感染1年未満であるかのどちからの査定になるらしく、だいたい「0.55~0.6以上(55~60%以上)」のアビディティ値であれば感染して1年以上経過しているとみなし、「0.3~0.4(30~40%)」であれば感染して1年以内と判断するとのことでした。

アビディティ値と感染期間目安

アビディティ値 感染期間
0.55~0.6以上
(55~60%以上)
感染1年以上経過
0.3~0.4
(30~40%)
感染1年以内

羊水検査をする基準値は?

トキソプラズマ感染を気にしなくても大丈夫と主治医に言われても、胎児への影響の有無は検査しないと分からないのではと心配になってしまいます。胎児に感染したかを調べる検査の一つに羊水検査がありますが、羊水検査で陰性となっても確実に大丈夫とは言えないことや羊水検査は子宮内に針を入れるのでわずかながら流産のリスクがあり、100%安全と言い切れないことも含めて、アビディティ値が「0.3~0.4(30~40%)」の場合、初感染であり1年以内の感染が疑われるため羊水検査を検討していくようです。今回はアビディティ値が「0.55~0.6以上(55~60%以上)」であったため、リスクがある羊水検査はしない方がよいのではとのことでした。

グラフに照らし合わせてみます!
   

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アビディティ結果後の治療

アビディティ値が67%と高い値を示し、初感染ではないと判断された場合、その後の治療についてまとめます。

Q&A

抗生物質は服用しなくてもいいの?

確実に初感染と疑われない高いアビディティ値であるため、スピラマイシン錠剤の服用はこの日を以って終了!とのことで、本日よりお薬は飲まなくてもいいことになりました。

出産後の臍帯血の検査は?

もし、胎児に感染していて出生後に症状がでていない場合なら、先天性トキソプラズマ感染症を見落としてしまうのでと不安になったり、本当に胎児に感染していないのかの安心材料として欲しかったので、臍帯血の検査を希望したのですが、アビディティ値が低値で胎児への感染の確率が高い場合、羊水検査をした上で羊水検査が陽性・感染が確定している場合に、臍帯血の検査をする方針とのことでした。病院によって検査の方針が違うかもしれないですね。

赤ちゃんの血液検査は?

赤ちゃんの血液検査によりトキソプラズマ抗体を保持しているのかで、感染の有無が分かるようですが、こちらも’出産後の臍帯血の検査’と同様に胎児へのトキソプラズマ感染症が強く疑われる場合のみ実施するようです。赤ちゃんは血液が少ないので、採血をすると貧血になってしまう恐れがあるとお話されていました。

最後に(まとめ)

妊娠初期検査でトキソプラズマ抗体が陽性となり3ケタを超えた高い数値でも、アビディティ値により初感染ではなく既感染であることが分かりました。トキソプラズマ感染症の胎児への移行、つまり感染率はそんなには高くないけど、「トキソプラズマ抗体が陽性」であった妊婦さんのエコー検査は、主治医が特に異常がないかを丁寧に診察していくようです。また、トキソプラズマ感染症について主治医も論文や経験などを参考にしながら対応し話している様子があります。日本全国的に先天性トキソプラズマ症になる胎児は少ないらしく、経過観察できる事例が多いとは言えないのかもです。母体のトキソプラズマ陽性の感染率は国や地域にも差があるらしく、鳥刺しの食文化がある鹿児島の妊婦さんは比較的陽性になる確率が高いみたいですね!

ただ、主治医が一言、お話していたことがあり、それは次の言。

既感染でもリスクが全くゼロではない。
既感染の場合、心配はいらないとのことで、服薬なし・羊水検査しない、出生時の胎児の検査もしないとの方針でしたが、リスクが全くゼロではないと言われると「え、どういうこと?」となってしまうものですが、おそらくこの一言は、慎重に診断した結果、胎児への感染の確率はないと判断できるけど、全てがすべてそう断言しない伝え方の方が何かあった時のための一言で、伝え方として医者の十八番の一つなのかなと感じました。それから、引き続き、エコーでもトキソプラズマに関する異常がないかなど丁寧に詳しく見ていきますね!という意味付けなんだと思います。
だけど、最後は「トキソプラズマ感染から時間が経っていると考えられます」と締めくくり、「伝え方で心配させてしまったらごめんなさいね。アビディティ値よりトキソプラズマ感染について気にすることはないです」と再度話されていました。

 

妊娠初期検査でトキソプラズマ抗体陽性が出ても、多くは既感染であることが多いとのことでした。検査結果より「安心」と言われてもトキソプラズマ感染は初めての言葉で経験なのでどのみち頭から「トキソ 陽性」というフレーズは離れず、気にかけながら妊婦検診を受けに行くんだろうなと思っています。

おしまーい。

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