秋冬に伸びた椿の新葉が枯れる原因と丈夫に育った生育環境・条件

椿は暑さが和らぐ10月頃から生育をストップさせ、冬に向けて開花の準備を始めます。しかし、寒さを感じていませんとばかり肌寒くなっても葉芽を伸ばし成長している椿も見かけます。今回は、寒くなる秋に葉芽が伸びた場合、枯れ込んでしまうのかもしくは引き続き丈夫に育つのかを観察します。

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寒くなると新芽を伸ばさない理由

椿は冬の花と言われているので、冬に元気な樹木だとイメージできます。冬に成長しているのではと思いがちですが、半分正解で半分グレーゾーンです。確かに冬に豪華な花を咲かせています。それは椿が元気に成長している証拠でもあります。しかし、植物は花を咲かせている時はエネルギーを花に注ぐので樹木自体伸長をしない≒成長をしないという理論があります。言い換えると、花を咲かせ維持するのにエネルギーを消費しているので、成長するためのパワーが足りないんです(花にエネルギーを吸い取られているイメージ)。そのため、開花時期つまり最盛期は、成長はしていない、もしくは非常に緩やかになっている状態です。

少し話がずれてしまったので、新芽の話題に戻しますね。冬は開花に向けて蕾の充実や花にエネルギーを注いでいますので、成長がストップしている状態なんです。つまり、冬に新芽が伸びることは極めて少ない事例なんです。

秋に新芽を伸ばすと枯れやすい?

秋は植物も過ごしやすい環境で、春らしい気候ともいえる日があります。たまに桜の木が秋を春だと間違えて咲いているときもありますよね。椿も同じで、暑さも和らぎ成長したくなる天候が続きます。しかし、それでも冬が待ち受けている肌寒さも感じる時期です。まだ寒さが厳しいわけではありませんが、地域や歳月によっては急激に寒さが到来することもあります。

新芽は柔らかく弱いため、冬の寒さや乾燥で傷み枯れ込みやすいものです。栄養不足や水不足で枯れてしまうというよりは、気候的な理由(寒さと乾燥)が多いとも言えます。葉芽が芽吹いたら、薄く鮮やかなみずみずしい黄緑色が徐々に分厚く深緑色をした硬めのがっしりとした葉に成長してどんな環境下でも生きていける丈夫な葉に発達していくんです。椿の葉にはクチクラ層があるため乾燥を嫌う性質をあることが分かります。北風や空気の乾燥の影響で丈夫な葉になる前に、柔らかな葉はダメージを受けて枯れてしまいます。

葉が伸びるということは枝も付随して伸長していきます。これから寒くなる時期に枝が伸び始めると、適切な環境ではない時期に伸びますので成長が遅くなってしまったり鈍くなってしまいます。本来の太く丈夫な枝になれずに細く弱い枝になる傾向があります。細く弱い枝は風で折れやすく、また細い枝から伸長した枝はより細い枝が伸びてしまい、樹木全体として華奢で貧弱な姿になり環境の変化を受けやすくなります。

そういう理由より、秋に新芽を伸ばすと枯れてしまう結果になりやすいと言われています。

秋に伸びた新芽が枯れる理由
冬の寒さに耐えられない
乾燥で水分が維持できない
付随して伸びた枝が細いと樹木が弱くなる
丈夫な葉に育つ前に適さない環境に晒され枯れる

冬に新芽を伸ばさない、もしくは伸ばしてしまうと枯れてしまう理由をご説明しましたが、では、冬に新芽を伸ばしてしまったその葉は今後どうなるのでしょうか?

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10月に伸長した葉芽の成長

椿の新芽が枯れる理由をお伝えしましたが、実際に対照実験をしました。野外に置いて枯れる要因に晒した葉芽とできる限り室内で負担が少ないように保護をした環境下で育てた場合、違いが出てくるのかを調べました。(樹齢は同じ、接木)

野外で管理した場合

 

10月下旬になっても葉芽を伸ばしている椿です。鉢植えで、屋根のない野外で育てています。購入してから2か月目の椿で、接ぎ木3年生です。赤みを帯びて小さめな葉が開いています。

鹿児島の10月の気温(℃)

鹿児島気候 10月 (℃)
平均 最高 最低
上旬 21.6 26.8 17.2
中旬 20.1 25.7  

15.2

下旬 17.9 23.3 13.1

11月の中旬から下旬にかけて、新しく芽吹いた葉は赤みがとれて、緑色に変化してきました。若葉らしさがなくなっています。葉は少しですが大きく開いています。枝は伸長していないです。

鹿児島の11月の気温(℃)

鹿児島気候 10月 (℃)
平均 最高 最低
上旬 16.7 22.1 11.8
中旬 24.7 19.8 9.9
下旬 12.9 18.2 7.9

日中は野外、夜は室内で管理した場合

葉の成長 vol.1 最長枝の葉

夏が終わり、少し気温が下がり始めたころに、最も成長している幹の頂芽が伸長してきました。葉芽が伸びてきたようです。夜から明け方にかけては、最低気温が19.2℃でまだ15℃を下回らないので野外で育てています。

鹿児島の9月の気温(℃)

鹿児島気候 10月 (℃)
平均 最高 最低
上旬 26.2 30.9 22.6
中旬 24.6 29.1 21.0
下旬 23.3 28.2 19.2

 

 

10月に入ると、葉が開いてきました。葉全体が透き通っているため葉脈が浮き出ているように見えます。新葉のため柔らかい状態です。葉芽の枝が伸びたら、上の新葉が開いています。

鹿児島の10月の気温(℃)

鹿児島気候 10月 (℃)
平均 最高 最低
上旬 21.6 26.8 17.2
中旬 20.1 25.7 15.2
下旬 17.9 23.3 13.1

 

 

10月の下旬は、葉の色も落ち着き深緑色に変化しました。頂芽に近い葉は若々しい色で葉の大きさが小さめです。頂芽がお顔を出していますが、大きくなる気配はなさそうです。最低気温が15℃を下回りましたので、植木鉢を夜は玄関内で管理し、日中はテラスで管理しています。

鹿児島の10月の気温(℃)

鹿児島気候 10月 (℃)
平均 最高 最低
上旬 21.6 26.8 17.2
中旬 20.1 25.7 15.2
下旬 17.9 23.3 13.1

 

  

 

11月の下旬になると北風が吹き、冬を身近に感じます。朝は霜が降り始める地域もあります。引き続き、夜は玄関内で管理をし昼は野外で育てつつもできる限り強風や雨にできる限り当たらないようにしています。若々しい葉ではなく深緑色で硬めの光沢がある親葉になりました。

鹿児島の11月の気温(℃)

鹿児島気候 10月 (℃)
平均 最高 最低
上旬 16.7 22.1 11.8
中旬 24.0 19.8 9.9
下旬 12.9 18.2 7.9

 

葉の成長 vol.2 蕾の上葉

10月下旬では蕾がだいぶ膨らんできました。蕾の充実と同時に、蕾の上から新葉が開いています。蕾を育てながら、新葉も伸ばしてとても元気な樹木であることが分かりますが、10月下旬は最低気温が15℃以下のため、日中はテラスで管理し、夜は玄関内に椿を移動させています。葉が傷まないようにできる限り、風当たりが少なく、雨よけができる場所で日光に十分に当ててあげ光合成をさせます。日光に適度に当てることで葉も強くなり丈夫になります。

  

約2週間ほど経過すると、新葉はすっかり深緑色になり光沢がある丈夫で力強い葉に成長します。蕾も開花してきました。
記事に掲載している椿の開花の様子を観察しましたので関連記事でご紹介します!
  
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開花様子のお写真の椿は「黄河」という品種です。小輪で八重咲きです。華やかな花色ではないけど、優しい黄緑色の開花は疲れた心を癒してくれます(*^^*) 蕾から開花、花終わりまでを時系列で写真掲載しています!気になる方は記事を覗いてくださいね。

考察・結果

秋に新葉が伸び始めた場合、10月から11月までの期間であれば室内でも野外環境でも同様に枯れることなく、新葉が親葉に生育できました。

樹木の姿・比較

振り返りになりますが、椿の若々しい新葉が枯れずに深緑色になり丈夫に育っていく様子を時系列と写真でまとめます。
10月は枝先端の一部の葉が若々しい黄緑色でした。

  

 

11月の開花中の樹木全体の写真です。10月は枝が伸長し、若葉が芽吹いていましたが、11月中旬になると開花準備とともに生育も落ち着き、全体的に深緑色の葉をしています。

  

 

新しい枝の伸長が短いほど、新葉が親葉になる時間を要せず、新葉から親葉に2週間ほどで成長することが分かりました。一方で、新しい枝を長く伸ばし、新葉の枚数が多い場合は親葉になる時間を要しました。

丈夫に育てる条件
(気温と時期が関係している)

夏が終わり少し涼しくなった9月から10月、11月中旬であれば、野外・室内関係なく新芽は枯れずに生育できることが分かりました。特に9月から10月に新芽を伸ばし始めた椿は、本格的に霜がおり寒くなる12月までに親葉に成長できると枯れ込む可能性が低くなります。寒くなっても新芽をぐんぐん伸ばしているのであれば、どうして伸ばしているのかを考えるのも園芸の楽しみの一つです。肥料の与え方や椿の種類による生育の違い、樹木の活力や樹力などを見極めながら、見守ってあげましょう。

12月になる頃には、秋に成長していた椿も落ち着いて生育をストップします。品種により、枝先には葉芽を数個つけ開花している椿やこれから開花するための蕾の準備をひっそりとコツコツと進めていますよ。

おしまーい。

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