椿が落葉して裸枝になる原因と細く貧弱な枝の管理と対策

元気に成長をしていた椿がある日、突然落葉して細い枝が1本だけ取り残されてしまいました。椿は常緑樹(投稿予定記事)のため、葉が落ちることはないと考えがちですが、実は落葉してしまうことがあります。椿が落葉する原因は大きく2つあり、その内1つを本記事でご紹介します。

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症状

花芽形成期に、確実に花芽が形成され順調に育っていた椿は7月中旬~下旬に、葉がなくなってしまい茶色の1本の枝が不自然に目立っていました。

落葉時の椿全体の写真
黄緑色の矢印:花芽

 

数多くの花芽がありますが、葉が落ちた裸枝が1枝。その様子を拡大しますね。当初、枝の先端にさらに細い枝があり、細い枝に約8枚の葉がついていました。しかしある日を契機に葉がすべて落ちてしまいました。そこから不要な枝を剪定した枝が次の写真です。

樹木全体は元気であることが分かります。他の葉も深い濃い緑色をして、花芽も茶色く枯れることなく育っています。
原因を追究するには症状を丁寧に確認していきます。
椿が落葉した症状
枝の葉が一カ所固まって枯れた
⇒樹木全体的に葉が分散して枯れていない。
(分散してあちらこちら点々と一枚、二枚と枯れた場合は別な原因がある)
日にち~週単位で枯れてしまった
⇒月単位で徐々に枯れていない。
樹木全体的に生育がよい
⇒落葉は一部の症状
この1本の枝だけ葉が落ちてしまったのか原因を解説していきます。

落葉の原因

落葉の症状から原因を分析すると、枝が細く貧弱なため葉を維持できるほどのエネルギー・体力がなかったことです。


樹木は成長が緩やかで2~3年かけて一つの枝を充実させますので、歳月をかけて育成してきた自らの体の一部を、失くしてしまわないといけないほどの状態だったんだね。。
1番の原因は「樹木のエネルギー・体力がなかった」ということ。原因を追究して考察します。植物が弱まる大きな基本原因を3点は「気温  ❸土壌」です。これらが「植物の代謝に影響を及ぼします。

➊ 気温

落葉した時期は7月、鹿児島県の気温を気象庁のデータより確認します。
落葉した鹿児島の7月(中旬~下旬)の月平均気温は27.7℃、最高平均気温は31.7℃、最低平均気温は24.4℃でした。高い気温で30℃を基準にすると、7月は30℃を越える日が28日・93%の確率で30℃越えの月となっています。
落葉した椿の品種は「黄河」(ユキツバキ科)です。
椿は科により住みわけがあり生育の分布が異なっています。ユキツバキ科が育つ地理的環境である分布は次の通りです。

ユキツバキの分布は本州の日本海側の諸地域に限られ,南限は滋賀県北部(36N),北限は秋田県田沢湖南部(39層)であるが、水平分布や垂直分布の幅や分布の密度からすれば,新潟県がその分布の中心域に当る。

ユキツバキは.多雪地で積雪中に保護されるところに限って分布し,少露地に生育しない。

ユキツバキ科が多く分布する新潟の気温を確認します。
新潟県の7月の月平均気温は26.1℃、最高平均気温は29.7℃、最低平均気温は23.1℃でした。具体的に30℃を基準にすると、7月は30℃を越える日が18日・58%の確率で30℃越えの月となっています。
鹿児島と新潟の気温を比較すると、最高平均気温に大きな差はありませんが30℃を越える日の割合から、鹿児島の7月は30℃以上にある日がほとんどで、一カ月30℃越えと言っていいほど。新潟は月の半日のみ30℃以上になる日があり、反対に15日間は30℃越えをしないということです。鹿児島より新潟の方が猛暑が厳しくなく暑さが継続していないので樹木が気温上休まる日があることが分かります。鹿児島は暑さと30℃越えが毎日続くので樹木にとって生育はできるけど心地よい適した生育環境ではないことが検討できます。
考察(原因:気温)
鹿児島では7月に枝の一部が落葉し、8月~9月で葉が日焼けをしました。7月に最高気温30度以上を観測した日が、鹿児島では28日以上、新潟では18日以上(快晴2日)でした。暑さに弱い品種という点で基準気温を30℃と想定した場合、30℃以上の日が続く日は樹木が弱ってしまう傾向が推測できます。

❷ 水

次に、「水」に視点を当てて検討します。植物が水を吸収できる方法は自然環境による雨水または人為的にジョウロでの水やりのどちらかです。今回の椿は屋根下に置いている鉢植えですが、雨の強さにより雨水の恩恵を受け、表面の乾燥具合を確認して基本はジョウロで水をかけています。


水かけが足りなかったかな・・・。

❸ 土壌

今回は鉢植えの椿。地植えと違い鉢植えは根が張る面積や用土が保持する栄養素が限られていることです。根が張る面積が狭いことで根詰まりをしたり、根が張りすぎると保水力が下がってしまい乾燥しやすくなったり、また用土が硬くなることにより根の呼吸に影響を及ぼしたりすることが懸念されます。鉢の中では、微生物や土壌細菌の繁殖も限界があり、自然界(生態系)による栄養素の補給が少なくほとんどは栽培者が与える肥料による成分が樹木が生育するための要素・ミネラルになります。痩せた用土で育ててしまっている結果になりかねません。鉢植えと地植えに共通する項目としては土壌に住むミミズの浸食。地植えであればモグラによる被害もあります。

症例の椿は、昨年の春に植替えを行い用土は2年目。適した時期に化学肥料(置き肥と液体肥料)、有機肥料も合わせて施肥しているため、土壌の栄養は原因から外すことができます。本年の春には新葉も芽吹き、昨年と比較すると一回り樹木が大きく成長している点も含めると、土壌による被害や原因は考えられにくいと判断できます。

最後に「植物の代謝」について考えます。

❹ 樹木の代謝

最後に「樹木の代謝」。生命の維持活動の兼ねあいを確認します。冒頭でお伝えしました通り、枝の先端が落葉した主な原因は、繰り返しになりますが「枝が細く貧弱なため葉を維持できるほどのエネルギー・体力がなかったこと」です。(i)季節的な樹木の代謝なのか、(ⅱ)環境的要因により樹木の代謝が関与しているのかでニュアンスが異なってきます。

考察(原因:気温)
今回、椿の一本の枝、かつ先端が落葉した症状を踏まえると、後者の「(ⅱ)環境的要因により樹木の代謝が関与している」と考えられます。気温が高くなることで一定の強い日差しに晒され、品種上、暑さに耐えられず樹木にとって一番貧弱で細い枝が枯れてしまった、表現を変えるとあるいは、枯らしていくことで他の枝や葉芽の生命維持活動にエネルギーを使うために枯らしたという結果を導くことができます。
次の章で、落葉した貧弱で細い枝はどうしたらよいのか、対処や後処理の仕方をまとめます。
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貧弱な細い枝の対処

枝の状況を確認

枯れた枝や剪定してもよい枝などの見極め方の一つともいえる「枝を手で触って曲げることで枝の状況を確認できます。手で枝を曲げた時”ぐにゅ~。”と簡単に曲がり枝の力が弱いことが実感できます。枝に樹力がなく水分が抜けている状態≒水循環ができていない。水循環をする必要がない枝かどうか見極めることができます。

枝が元気であれば、手で曲げた力に背くようにもとに戻ろうとする力が強く、これ以上曲げたら折れてしまうのではと思わせるぐらいです。

枝に元気がない場合、細く貧弱の枝を残しても意味がありませんので剪定をします。


細い枝から新芽がでたとしても細い枝しか形成されないことや、細い枝につく花は小さく弱い花が開花するかもしくは花がつかない傾向があります。

剪定

剪定をする時は、ブランチカラーを意識して剪定し、切り口に防腐剤を塗ります。

関連記事
椿剪定用のブランチカラーを記事にしていませんが、ブランチカラーを意識しカルス形成を促す剪定の仕方・切り口の角度、切り方を「紫陽花の剪定」においての記事でまとめています。基本の剪定の仕方は同じなので椿剪定用の記事をまとめるまで「紫陽花を例にした剪定の見本」をリンクしますね。ご参考までに。

 

剪定後にトップジンMを塗りました

 

トップジンMの紹介
剪定後の切り口に防腐剤を塗ることで、外からの菌の侵入を防ぎます。一つあると重宝します。

 

切り口の枝の様子。1~2年生の枝です
緑色ですが、茶色になり枯れます

次の章は貧弱で細い枝を切った椿の生育状況をご紹介します。

生育状況

剪定2~3カ月後の樹木の状態をお伝えします。トップジンM(防腐剤・殺菌剤)を塗ったことや適切な切り方により、大きな幹を枯らすことなく剪定切り口の少し上に出ている葉も枯れることなく生きています。3か月後には蕾が肥大化し開花しました。

剪定2か月後の切り口の様子
オレンジ色のトップジンMが白色に変色している

 

剪定3か月後の切り口の様子
トップジンMが分からなくなった

 

椿全体を見ても切り口が分からない
剪定した上の幹も元気。葉も力がある

 

開花しました!

 

本記事でご紹介している椿が気になる方は関連記事より開花の様子をご紹介します

関連記事
希少椿「黄河」の開花の様子をまとめています。開花始めは10月下旬から11月上旬に1輪目が咲き始め、徐々に開花していきます。丸いぷっくりとした蕾で、花色は緑色から黄色へ色変わりします。気候や年にとって多少、開花の様子が変わります。
追記
細い枝を剪定した3年後の椿の様子を投稿します。枯れることなく元気に成長していますよ。

剪定した傷口
2023年8月末【約6年生】

管理と対策

椿は家の生垣として愛用される樹木なので夏場や冬場の自然環境に強いイメージがありますが、品種(科目)により丁寧な管理が必要です。椿の種類(科目)により生育分布がありますので、その環境に近づけた育て方をしてあげることが大切です。夏場は直射日光からの遮光をしたり、冬場は北風や強風が直接当たらない場所で管理をしたりすることを視野におき、品種がもつ特性に似合った栽培環境に近づけてあげましょう。細い枝は剪定時期に剪定し、後ほど枯れてしまったということがないようにしたいですね。


来年の夏場は、今年より遮光をし直射日光が当たるのを防いだり、日差しが当たる時間帯(午前中・午後)、時間数も対策を試み育てる計画を立てていきます。

最後に
(まとめ)

今回の症状より、椿の枝の先端が落葉してしまった原因は「(ⅱ)環境的要因により樹木の代謝」が関与し、枝が細く貧弱なため葉を維持できるほどのエネルギー・体力がなかったことことでした。細枝の行く末は枯れてしまうこともあるので適切な剪定時期に切ってあげた方がよいことが分かります。

落葉するもう一つの理由は、前者の「(ⅰ)季節的な樹木の代謝」があります。次の関連記事でご紹介します。興味がある方は是非、読んでくださいね。

おしまーい。
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