市販では12月頃から店頭に並び、通販では早くて10月から予約販売が始まる薔薇の大苗。プロが育てた大苗を購入後も正しい育て方で、健全な株の状態を維持していきたいですよね。大苗の特徴やよい苗の選び方、通販で届いた大苗の状況を知り、購入後の育て方をお伝えします。
目次
大苗の特徴
大苗とは、新苗を1年間農場で充実した株に育て、冬の休眠期に掘り上げ剪定後の苗木です。10月頃から大苗のネット予約が始まり、11月から12月頃に6号程度の植え付けた鉢苗として流通し入手するできます。
選び方・見極め方
よい大苗とダメな大苗ってあるのかな?
1. 太い枝がある
「太い枝が3本はある苗」がよいと聞いたことがあると思いますが、バラのタイプ(0~4)や品種、木の生育サイクルや太り方によって異なってきますので、必ず太い枝が3本必要というわけではありません。
ラベルがある枝は充実した太い枝です
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シシリエンヌの特徴について。花輪は中大輪、タイプ1(比較的育てやすく、野性的で強健な薔薇)ということで、中大輪の場合、鉛筆の太さの枝が1本以上あり充実した枝がある苗を選びます。タイプ1の場合、太い枝と細い枝が混じり合っています。
fa-asteriskタイプごとに大苗の見た目が異なりますので、大苗を入手し次第、こちらに違いを更新していきますね。
大苗は、大輪と中輪の花輪を咲かせる品種が流通しています。太い枝とはどのくらいの枝なのかを見分ける目安を示します。
fa-asterisk中輪 ⇒ 割り箸
fa-asterisk小輪 ⇒ 爪楊枝
次に充実した枝を見極める2つ目のポイントは「枝の木質化」です。
2. 木質化した枝の切り口
大苗の枝の切り口を見て、木質化を確認します。木質化は、植物体内にリグニンという物質が蓄積することで枝が茶色くなり木のように硬くなる現象です。リグニンは、植物の細胞間を埋めて強固する作用により丈夫な組織に変化させる役割があります。
木質化した枝の切り口・理想の切り口
木質部の面積が広く、中央に髄(芯)がある
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大苗のほとんどは木質化できている枝です。たまに、亀裂が入っている切り口もありますが、元気で太い枝であればカルスが形成され自己防衛反応が働いているので正常な枝と言え、特に問題ありません。見た目は心配ですが、太い枝からは後ほど更新用のシュートが発生していきますので、枝を更新していけば、亀裂という見た目は気にすることがなくなります。
木質化できているけど亀裂がある枝の切り口
カルスが形成されている
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枝が充実し木質化すると樹皮に変化が出てきます。
3つ目のチェックポイントは「樹皮(枝)の縦縞」です。
3. 枝の縦縞(木質化の始まり)
枝の樹皮を見ると、緑色の樹皮の細胞繊維に沿って、縦に茶色の筋(縦筋)が入っています。これは縦縞と呼ばれています。堅く締まっている枝である証拠です。
枝の縦じま
木質化が始まっているサイン
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縦縞は枝が充実し始めているサインになります。この縦縞が増えてきて枝が覆われると枝全体の見た目が茶色になってきます。更新枝のシュートが出やすい条件がそろってきます。
4. 根元が太い苗
大苗は接木により新しい苗を増やしています。接木で使っている土台の影響も受けますが、根元が太い大苗を選ぶようにします。太い分、元気で健全に育っている証拠。ただし、根元が細く太くないからと言ってダメな苗ではありません。大苗が成長して1~3年ほど経過すると、購入した大苗の根元より3~4倍ほどの大きさに成長します。
大苗の根元(タイプ1:シシリエンヌ)
植替えの時、ビニールテープを外します
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5. 害虫被害がない苗
大苗からすでに芽や葉がでている場合、変色や虫食いの有無を確認します。枝や葉に卵を産みつけふ化した幼虫が髄を食害しながら越冬する害虫の被害に遭っていないかを調べます。薔薇ではテッポウムシの被害がありますね。害虫による食害を受けている穴であれば、穴の周囲に木クズがついています。一方で枝の剪定による枯れ込みから穴が開いてしまった苗もあります。
害虫被害・剪定時の枯れ込みなのか購入時では不明
木くずが出ていないので害虫駆除後の痕跡かも
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6. 芽と葉の動き
●理想の芽
大苗の理想の芽を写真を掲載します。枝から少しだけ顔を出している赤みを帯びた芽がよいコンディションです。
越冬の芽
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大苗は冬眠中のため芽や葉が動いていない状態で販売されていますが、品種や環境によっては芽や葉が動いている苗もあります。
芽と葉が動いている場合は、購入後の育て方のコツを知っておくことで、枯らさずに育てることができます。
●芽が動いている
実は園芸店で販売されている大苗を観察すると、芽が出ている大苗がほとんどです。冬は休眠をしているため、芽や葉が動き出していない状態がよいのですが、寒い地域で育てられた薔薇が温かい地域で販売されることによる寒暖の差や切り花系統の品種や冬でも開花を促されていたため、冬に少しでも暖かい日が続くと芽吹きが促進されたことが原因で芽が動き葉が出てきたといえます。
芽が動いている枝
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春までの育て方
芽が動いている苗は、根も動いていますので鉢増しの植替えや路地に植え付けをする際は根鉢を壊さないようにします。基本的に大苗を入手したらすぐに植替えをする必要はありません。厳寒期が過ぎるまで冬の北風で芽が傷まないように寒冷対策が必要です。新芽や葉が出ている場合、環境が変わると枯れ込むことがありますがピンチや切り戻しなどせずに基本はそのままにします。(寒冷地の場は切り戻しをし、光の当たらない暗い部屋で管理をします)
●葉が出てきている
葉が出てきている
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春までの育て方
芽吹きと同様の管理をします。冬なのでアブラムシなどの害虫被害にあうことはほとんどありませんが、葉がある以上は農薬散布をします。
薔薇の散布で欠かせないスプレー
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最後に
-充実した枝を選ぶ理由-
充実した枝は今後その苗にとって古くなる枝のことです。「古い枝⇒枯れていく枝・不要な枝⇒子孫を残し株の生存性を確保するために新しい枝(シュート)を出す」というメカニズムが働きます。充実した枝を選ぶことで、春・開花後に元気なシュートを出すことができ、枝が増えれば開花数も上がり、大苗のその後の成長や生育をよりよくできるという結果に結びつきます。シュートを出して新しい枝に更新できる大苗を選ぶために、太い枝、切り口が木質化している枝、樹皮に縦縞がある枝を確認し、シュートを発生する充実した枝がある大苗を選ぶようにします。
fa-asterisk切り口が木質化している枝
fa-asterisk樹皮に縦縞がある枝
大苗が届いたら、植え替えはせずに北風や西風の当たらない場所で春まで管理してあげましょう。特に紫、オレンジ、黄色等の花色、切り花品種、ハイブリッドティ、ミニバラ、また枝が青々している品種などは、枝が枯れ込みやすいので霜の当たらない軒下に置くようにします。
おしまーい。