チューリップ球根の消毒をしないとどうなる?-生育と腐敗を数値で比較-

チューリップ球根の植付け時に消毒はした方がいいのか、しなくても花を楽しむことができるのか気になる方に是非参考にして欲しい記事です。消毒の有無により生育やカビや腐敗が生じる確率や頻度が変わるのかを植付から掘り上げまでの期間を対象に目視観察と掘り上げ時の分球数から消毒の有効性を調べてみました。原種チューリップで実験しています。 最初にご覧になっていただきたいのが次の一覧です。コレ、まとめるの大変でした(>_<)。2021年に育てた原種チューリップの品種22種類・植付け球根424個の生育状況をまとめています。本記事に結論を導くのに適した対象チューリップだけを抜粋して載せています。数値が好きな方は拡大して見てくださいね! P.S 間違いがあったらコメントください('ω')ノ この「2021年 原種チューリップ球根の植付け時の消毒における腐敗率について」の資料をもとに、消毒の有効性を解説していきます。解説頑張るゾ(*^^)v ただ、記事が長文なので目次から必要な項目をお読みいただければと思います。 先ずは、実験の条件を紹介します。

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実験の条件

本題に入る前に、実験の条件をまとめます。使用した消毒液の種類は青かび病予防のオーソサイド水和剤と腐敗病予防のベンレート顆粒で、植付前に処置しています。(購入した球根は未消毒)

消毒をした手順を一覧です。

   

次に、植付条件を箇条書きにします。
その① 植付けをした用土に差がでないように、水はけが良く原種チューリップに適した土をブレンドして同じ配合率の用土に植付けをする。

条件の続きを引き続き、書きます。
その② 同品種、同じ球根サイズもしくは同じ膨らみ方を選び球根自体に個体差がでないようにする。
その③ 植付け時期や掘り起こし時期も同日で行い、球根が土壌に触れている期間を同じにすることで病気が発生する環境要因を揃える。
その④ 置き場は日光や雨が当たる時間、風通しなど同じ条件下の野外に横並びに鉢を置き、移動させないようにする。自然環境下でありのままに育てる。
その⑤ 項目「掘り起こし時・病気・腐敗等」は掘り起こし時に目視で確認した子球根をカウントする。一覧ではカビと腐敗を分けずに数字にしている。
その⑥ 項目「腐敗率」は(掘り起こし時・病気・腐敗等)÷(分球した子球根総数)×100(%)で計上。
その⑦ 掘り起こした来年用の子球根のサイズの分類は球根円周の測定により分類する。「大」は円周3㎝以上、「中」は円周2±0.5㎝、「小」は円周1±0.5㎝とし、微妙なサイズは比重も考慮する。 掘り起こした球根の分類例をご紹介します。1.ハミリスの親球根消毒ありを10球植えて約5か月後に掘り起こした子球根は(大)8個、(中)4個、(小)4個に分球していました。腐敗がカビの被害を受けた球根はなしです。資料で伝えると「1.ハミリス>消毒あり①」にカウントされています。

   

細菌性病気の種類と写真

項目「掘り起こし時・病気・腐敗等」に該当する対象球根を写真でお伝えします。

カビ

球根に白色のカビが生えている
   

このカビの写真は品種「9.オルファニデアフラバ」の分球した1つです。個数カウントは、掘り起こし時>病気・腐敗等>消毒なしの「1」個体に該当。掘り起こし直後において、オルファニデアフラバ以外の消毒をしなかった球根ではカビは見当たりませんでした。 球根にカビが生えている件については、本記事後半でいつカビが生えているのかを分析しています。

腐敗病

腐敗する進行状況により症状が違います。
   

球根の一部が染みになっています。徐々に腐敗が進んでいます。腐敗が進むと後ほど青かびも生えてきます。

結果

消毒は有効だった

消毒をやってよかったと立証できるデータをピックアップしてみると、2.リトルプリンセス、8.リジー、13.ヒルデの3品種です。(上記表の紫色の枠で囲んでいる3品種のこと)

腐敗率(%)
品種 消毒あり 消毒なし
2.リトルプリンセス ① 0 60
8.リジー ①・② 0 8.3
13.ヒルデ ① 11.8 100


(考察)
消毒ありの表記①はオーソサイド水和剤のみを使用した消毒です。消毒対象は青かびの予防でしたが、消毒なしでカウントしている球根数はカビではなく腐敗が原因でした。そのため、消毒をしても消毒をしなくてもカビは生えなかった、もしくは生えにくいかったと考えられます。(病気の発生は農薬による予防も含めて用土や育て方によって差がでてきますので必ず農薬で解決できるとは限らないです)表記②はベンレート顆粒のみを使用した消毒で腐敗予防が対象でしたが腐敗もカビも見つけられませんでした。ということで、リジーは消毒をすると腐敗の発生率が0%となり消毒なしでは8.3%であることから消毒の有効性が確認できました。 ただ、カビは掘り起こし時には確認できず、厄介なことに保管中に発生してしまう結果もあります。オーソサイド水和剤を使用しなかった「消毒なし」の球根ですが、掘り上げて乾燥させてから約1ヶ月経つ球根の外側が茶色くなり始めた頃にカビが確認されました。

薄っすら白くカビの藻が広がっています。
   

保管時のカビの繁殖を防ぐために掘り起こした後にはオーソサイド水和剤で消毒をした方が良いのではと考えられます。

消毒はしなくてもいい説

消毒はしなくてもよい、もしくは消毒の効果がないのではと考えられるデータをピックアップします。そう考えらえるのは消毒ありと消毒なしの腐敗率が同等の0%であるか、もしくは消毒ありの腐敗率が消毒なしの腐敗率を上回る時です。腐敗率:消毒あり>消毒なし、消毒をしなかった球根に病気が侵入していなければ消毒しなくもよいのではという結果になりました。

腐敗率(%)
品種 消毒あり 消毒なし
1.ハミリス ① 0.0 0.0
3.タイニーティモ ① 18.5、② 100、 ③ 55.0 0.0
5.サマンサ ③ 0.0 0.0
6.リトルビューティ ① 0.0 0.0
7.レッドビューティー ③ 0.0 0.0
8.タルダ ① 100 100
12.サクサティリス ① 64.3 64.3
13.ポリクロマ ③ 0.0 0.0

※「8.タルダ」の腐敗率は例外とする。タルダは、新規購入した球根ですが開花できず葉だけ生育し、他の品種より掘り起こしが約3週間遅れたことや分球した子球根は病気の被害ではなく鉢底に潜りすぎていたことにより来年開花が見込める球根の状態ではなかったため。なお、「3.タイニーティモ」の②ベンレート顆粒のみの消毒による10球は葉が枯れなかったため掘り起こしが遅れたため腐敗率が大きかったと考えられる。
(考察)植付け時の球根の見極めと病気にかからない環境で適切に育てること、水はけのよい土に植えるなど要因を取り除くことで農薬に頼らず発生を防ぐことができる可能性があると考えられます。ただし、このデータの落とし穴は親球根の腐敗をカウントしていないことです。値は子球根が腐敗をしているかしていないかです。親球根の腐敗は消毒なしの球根で確認できるが、頻度は低く分球した子球根にはまだ腐敗が伝染していませんでした。進行していなかったのは掘り起こしを行い病原菌との接触を無くしたからと考えられます。また、子球根が分球するタイミングで親球根は役目を終えて球根がありませんでした。しっかり掘り起こしの時期を見計らうことができれば親球根が万が一腐敗病になったとしても子球根への影響を防ぐことができると言えます。腐敗病になった親球根から分球した子球根は、掘り起こし時に腐敗が確認できなくても、保管中と腐敗の初期症状が見られることもありました。(雨が降った翌日に掘り起こした球根にもみられるケースがあります)そのたびに、カビを拭いてあげてました。

掘り上げた子球根 腐敗病の初期症状が見られる
   

病気に強い品種と弱い品種

原種チューリップを22品種育て、実感できることが品種の特徴を知れることですね。本記事の資料から分かることは白色の色素を持つチューリップは分球をしても来年植えられる球根のサイズまで育っていないことや開花しやすい品種、開花しにくいなどの特性、病気への耐久性などが少なからず影響していると思われます。分球率から見ると、リジーやリトルプリンセスは分球しやすく病気にもある程度の耐久性があるため育てやすく環境に強い品種と推測できます。

葉が病気でも正常な分球が得られた

サクサティリスは球根から芽がでた初期から葉が腐敗し葉腐病になっていましたが、開花し分球もしていたことより、葉が病気になっても球根に影響しない広がり方であれば正常な分球が行われることが分かりました。細菌感染に効果的な殺菌スプレーはしませんでした。

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総論:消毒の効果と有無

さて、消毒の有効性を綴ってきました。結論、消毒はした方が良いと言えます。消毒は植付の親球根。分球した子球根を掘り起こした時に消毒をするとよいと言えます。もし消毒をしないで親株が病気になってしまい、さらに掘り起こしのタイミングが悪く分球した子球根まで病気の感染を広げてしまう可能性があります。掘り起こした時に病気の症状がなくても、保管中の保菌球根に症状が現れることもあります。やはり消毒は有効と判断できます。 最後に、いつ消毒するとより意義をなす消毒で効果的なのかまとめます。

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効果的な消毒のタイミング

正直に言えば、植付時(親球根)と掘り起こし~保管(子球根)までの2回、球根の消毒ができれば一番効果的と言えます。ただ消毒液の購入もお高いので経費を押させたいなら、植付前は腐敗病予防のベンレート顆粒を使い、掘り起こしから保管するまでの間にカビ防止のオーソサイド水和剤を使う消毒がおススメです。

腐敗病予防のベンレート顆粒
   

カビ病予防のオーソサイド水和剤
   

理由は球根を植えてから掘り起こし迄に腐敗が起きることや保管時にカビが生える確率が大きいからです。消毒をする前に確認して欲しいことは、新しく購入した球根はすでに販売元・生産会社による消毒済みの場合があります。その場合はどの病気に対する消毒をしているのか確認をして必要に応じて個々で消毒をしていきます。チューリップが芽を出した葉に腐敗やカビが見られたら、該当部分を取り除きさらに地上に見えている植物体に直接殺菌スプレーを散布するようにします。

最後に(まとめ)

球根の消毒はした方がよいですが、一番大事なのは育てる環境です。病気になる要因を取り除くように育て方を工夫できると消毒をしなくても元気な球根を来年度に残していくことができます。消毒をしたくない方は、病気に強い品種を育てるとよいでしょう。 関連記事をご紹介します。是非、読んでくださいね。

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まとまりのない長文失礼しました。
おしまーい。
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