紫陽花の花芽と葉芽を見分けて木質化した枝を根元から切る強剪定の仕方

購入した紫陽花の枝は緑色をしていますが1年する枝は茶色く変色し太く硬くなります。枝が枯れたのかな、病気になったのかなと悩みますが枝が「木質化」したことが原因です。今回、木質化する原因、木質化した枝はいつ、どの程度の剪定をしたらよいのかについてお伝えします。

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剪定時期

強剪定は木質化した太い枝をばっさり切り、枝の整理や樹形を整えるためにおこないます。太い枝を多く切るので通常の剪定より何倍ものダメージを樹木に与えることになります。紫陽花への負荷やストレスを最小限に抑えるには、休眠期である真冬が最適です。休眠期は枝が生育をストップしているため、切り口から出る樹液も抑えられます。

紫陽花を剪定しすぎたり、花芽まで切ってしまうと翌年花が咲かない原因になってしまいます。そのため冬芽の形成が一目で分かり、葉が開き出さない1月後半~2月初旬が強剪定に向いていると言えます。2月中旬から後半は品種によっては冬芽が開き始め、根も動いています。冬芽から葉が出始めると剪定の時に葉を傷つけたり、冬芽や葉が折れてしまったりします。

2月23日。ガクアジサイの冬芽
霜が降る冬。鹿児島の最高気温8℃
   

 

次に、剪定で必要な知識として花芽と葉芽の違いを写真で解説します。

花芽と葉芽の見分け方

冬芽には花芽と葉芽があります。花芽は尖がっていて枝の先端と枝の途中に形成され、葉芽は丸みを帯びていて小さめで枝の途中にポツッと形成されます。

枝の先端にできた花芽
花芽に葉と蕾が詰まっている
  

 

枝の途中にできた葉芽
昨年、葉があった跡に形成されやすい
 

 

剪定では、冬芽のうち特に尖がっている花芽を切り落とさないようにします。花芽を切り落とすと花が咲かなくなります。強剪定ではたくさんの枝を落とすので、花芽をすべて切り落とさないようにします

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強剪定の手順

花を咲かせる剪定

伸びすぎた紫陽花を強剪定します。剪定をした上で花を咲かせるコツは花芽を残すことです。剪定前に、花芽の数や位置、主幹の枝の太さ、本数を確認します。強剪定後の樹形をイメージし、剪定する枝を見据えます。

強剪定をした方がよい紫陽花

 

枝先に開花見込みの冬芽がなく枯れ枝が混み合っていて、先端付近に冬芽がなく根元近くに冬芽が形成されているため、強剪定をした方が良いと判断しました。

それでは早速、不要な枝から切っていきます。

細い枝

割り箸の太さの枝は強剪定の対象です。細い枝の先端に冬芽が形成されていても、細い枝から伸びる枝は太さが同等もしくはより細くなります。その枝の太さに耐えられる花が咲きますので、細く貧弱な枝は豪快な花房をつけることができずに小さな花房をつけることになります。小さい花房も可愛らしさがありますが、花を咲かせること自体にエネルギーを消耗しますのでキレイな豪快な花を咲かせるようにしたい場合、休眠期に剪定します。

 

主幹との交差、分かれ枝で剪定します
 

混み合っている枝

強剪定の一番の目的は混み合っている枝を根本から剪定することです。交差している枝や伸びている方向が違う枝を切ります。根元から剪定してよい場合とそうでない場合があります。そこで枝の太さの確認と冬芽を探します。根元の枝の太さは約2㎝あり太い幹といえます。また混み合っている枝と根元の途中に立派な冬芽が形成されています。さらに強剪定でそろえる枝の高さに似合った場所に冬芽があるかを確認し、枝を残して樹形(株立性低木)が崩れなければ、この冬芽の2~3㎝上で剪定します。

紫陽花の基本樹形がどんな形なのかを知ることは、剪定をする上で大事な知識です。やみくもに剪定をするのではなく、剪定の意義でもある紫陽花の本来の樹形を整えてあげることが大事です。

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剪定をする時は紫陽花の自然樹形(株立性低木)を意識すると上手に剪定ができます。「株立ち樹形は複数本の幹(主枝)が立っています。複数本の具体的な本数は3本以上」理想な樹形はどんな姿なのか、本来の樹形をイメージできるように写真で解説しています。

樹形の高さを意識する

先端に花芽が形成された太い枝はよい幹ですが、全体的な樹形のバランスを損なってしまいます。冬芽を確認し、他の幹との高さを揃えるように剪定をします。

強剪定したその後の樹形です。
太い幹を3本以上、各幹に花芽を残します。
 

真横から撮影した強剪定後の紫陽花
 

強剪定で切った枝

 

花が咲かない剪定

花が咲かない原因は花芽をすべて取り除いたためです。しかし、強剪定をする紫陽花によっては樹木に体力がなくて今年は花芽を形成できなかったり、冬の寒さや乾燥で枯れてしまったりと生育や状態はさまざまです。花芽がない枯れた枝だけが残っている場合は、来年の開花は見送りになる可能性が大きいです。枯れた枝は剪定をしてすべて取り除く必要があります。

枝先に花芽の形成がない
細い枝が枯れてしまった紫陽花
 

枯れた枝を全て剪定する場合ですが、地面から新しい冬芽が出てきているのを確認しましょう。枝が枯れてしまっても、地面から冬芽が出ていれば根が生きている証拠で、新しく樹形をつくることができます。

全て枝が枯れても地面から出てくる新しい芽が幹を形成します。冬芽が顔を出しているのが分かります。冬芽の葉が開き始めていますので、もう少し早い時期に冬芽を確認して強剪定ができた紫陽花でもあります。

 

枯れた枝は思い切ってすべて剪定をします。ここで古枝を残していても、新しい冬芽が成長して伸びた時に邪魔になり、新しい葉の風通りが悪くなったり、強風のときに新葉を傷つけたりとデメリットが大きくなります。また6月の切り戻しの剪定時に古枝が邪魔で剪定ばさみが入らなかったり、切りたい枝が切りにくかったりします。

地面から出てきた新しい冬芽だけを残して
古い枝をすべて切った後の紫陽花
 

ここまで強剪定をした場合、花を咲かせるのは難しくなりますので、次年に開花できるような株を今度育てていくことが大事です。枝が枯れてしまった原因が必ずありますので、栽培環境を見直す必要があります。葉が芽いてきたら液体肥料を与え枝を葉をしっかり生育させます。夏場の暑さや紫陽花に多い炭疽病やうどんこ病の対策をおこない、9月から10月に向けて冬芽が形成できるように育てていきます。
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紫陽花を咲かせるには枝が充実していることに加えて、9月から10月にかけて枝内部で冬芽の形成に向けての準備が始まりますので、冬の寒さや北風、乾燥に耐えれる引き締まった冬芽を育てらえるように栽培します。紫陽花は育てやすい植物ですが、品種によっては丁寧な栽培管理が必要です。
さて、次に剪定した枝の切り口を見てみましょう!

剪定した枝の切り口

強剪定をした枝の切り口を確認すると、太い枝ほど充実した枝となっていました。充実した枝とは、次の写真の左側の断面図のように髄(中央の白い部分)の面積が小さくなっています。若い枝は髄の面積が広いことが分かります。剪定をする時に感覚で分かるようになります。

どちらも大事な枝ですが、強剪定は太く引き締まったよい幹を多く切ることになりますので、入り口に防腐剤を塗り、紫陽花へのダメージを押さえてあげます。

紫陽花の強剪定をする時は幹の樹皮が茶色くなっている、木質化された枝を切ることになります。強剪定の時期にはアジサイの全ての枝が木質化しています。木質化した枝からは花は形成されず、冬芽が開き伸びてきた新しい枝に花を咲かせます。そのため、木質化した枝は花を咲かせない≒剪定をして株をリフレッシュさせ更新させた方がよいという認識があります。確かにそうなのですが、木質化する原因や理由を知っておくと紫陽花の生育をもっと間近に感じられ、剪定する枝の見通しやキレイに咲かせる剪定が身につきます。お時間がある方は次の章で木質化とは何!?木質化が起きる原因をまとめていますので是非、読んでくださいね。

木質化とは

木質化は枝が茶色く変化し、木のように硬くなる状態のことです。木質化(もくしつか)もしくは木化(もくか)と呼ばれ、これらの枝は古枝や不要枝として扱われています。

では、どうして紫陽花の枝は木質化するのでしょうか?

植物の体を守っている

木質化をしている紫陽花を観察していると次のような環境で育てていることが影響されているのではと考えられます。

木質化した紫陽花の特徴
①大きく成長した
②栽培期間が長い

北風に晒されたり、直射日光に長時間当てたりなど紫陽花によってストレスや負荷がかかる環境から硬い壁や隔たりを作って自分の体(紫陽花の茎や株)を保護していると考えらえます。「木化」は樹体の姿勢保持に重要な現象です。木化した細胞はやがて死細胞となりますが、組織は強化されます。

リグニン成分の影響

紫陽花は樹木(木本:もくほん)の位置づけなので、1年草や多年草などの草本と違い、木部細胞を年々貯蓄して肥大化し成長していきます。形成層が木部質をつくりながら肥大化していくことで年輪が形成され幹が太くなっていきます。木質化に関与している成分が『リグニン』です。リグニンが植物の細胞壁に蓄積・重合することで幹が硬くなります。

もう少し木質化について掘り下げてみます。

木質化のメカニズム

植物は二酸化炭素と光エネルギーを取り入れることで葉緑体が光合成を行い、酸素を放出しブドウ糖(炭水化物)を生成します。昼間は光合成によりデンプンを葉に貯蓄し、暗くなるとデンプンを液体のブドウ糖に戻して生長点に送ります。このブドウ糖がエネルギーとして植物の生育を維持しているわけですが、ブドウ糖は木質化を促すリグニン生成します。

*樹体を形成するための3つの成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)は、光合成によって生成されたブドウ糖から作られます。それでは3つの成分のについての役割を確認していきましょう。

リグニン

リグニンは高等植物に存在する芳香族高分子化合物で、細胞壁内および細胞壁間に沈殿し、細胞同士を癒着しています。細胞同士を癒着することにより木の組織は化学的、物理的に強固になり、また、リグニンは疎水性(水の蒸発や水漏れの防止)の機能が備わっているため、根から樹木までの水分の通り道を確保できる役割があります。

一方で、生まれたばかりの細胞の壁は極めて薄く、主にペクチン質やキシログルカンによって構成た段階の細胞壁にはリグニンは含まれていません。

若い枝はまだリグニンが生成され蓄積されていないから木質化してないんだね。だから、若い枝は緑色をしているのね。

細胞壁にセルロースやヘミセルロースが沈殿し、セルコーナー部、中間層、一次壁の順にリグニンの沈殿が進み、木化されます。木が堅いのはリグニンが含まれているためです。

セルロース

主に細胞壁の主要部分(二次壁部分)に存在し、紫陽花の樹木を支える役割を担っています。その細胞間に高濃度でリグニンが存在しすることで、細胞壁と細胞壁がくっついています。

ヘミセルロース

ヘミセルロースは、セルロースとペクチン系多糖を除いた成分であり、セルロースと同様に細胞壁の主要部分(二次壁部分)に存在します。複数の単糖からなる複合多糖でその構造は針葉樹、広葉樹についてそれぞれ特徴があります。

木質化した枝のデメリットとメリット

木質化できた枝は基本的によい枝で、その枝を形成した株は成績優秀者です。育った環境にも適応し、その環境で立派に育っていくことができる品種とも言えます。紫陽花の強剪定で「木質化した枝は根本からばっさり切り落としましょう」というイメージが強いですね。それは、木質化した枝には冬芽(花芽・葉芽)が形成されますが、木質化した枝自体から花が咲かないからです。形成された冬芽から葉が伸び、茎が伸び、伸びた枝の先端に花を咲かせます。つまり、花が咲く位置が高くなり、樹形自体が大きく成長します。樹高が高くなると管理をしにくいことや見上げないと花を見れないデメリットが挙げられます。紫陽花は真上から鑑賞する花ですから目線より下で開花させた方が鑑賞の楽しみがあります。紫陽花は、株立性低木で複数本の幹が地面からでて樹形を形成しています。この主幹となる幹を根本から切ることで新しい幹が地面から出てきて、株を新しくリフレッシュすることができ株の寿命を長くすることができます。木質化した枝は、髄が引き締まっていて枯れ込みが少なく、冬の寒さや乾燥を乗り越えられるよい枝です。

木質化した枝
メリット
充実した枝の形成ができている
冬の寒さや乾燥で枯れにくい
よい冬芽形成につながる
樹形をつくっている
デメリット
樹高が高くなる

株の老朽化
手入れ
強剪定で新しい枝と世代交代させる

最後に(まとめ)

強剪定をする目的は株のリフレッシです。木質化した古い枝、樹幹を損なう枝や枯れた枝を根本から切り落とします。

強剪定が必要な紫陽花

最後に強剪定を必要とする株をまとめます。

強剪定が必要な株
冬芽がない枝
細く混み合っている枝
古く枯れた枝
樹形を損なう枝

強剪定の仕方として、冬芽を数個だけ残した枝を短くする事例と根本からばっさり切る事例の2パターンを紹介しました。木質化している枝だから強剪定して根本から切るという目的ではなく、株の今後の成長を見越して強剪定しましょう。

強剪定で使いたいノコギリの紹介

強剪定では木質化した太くて硬い幹を切りますので、剪定ばさみでは切りにくい時や切れない枝があります。枝が込み合っていると剪定ばさみが枝の隙間に入らなかったり、切り方の角度が悪いときがあります。そんなときは、ノコギリを使うことをオススメします。

紫陽花の太い幹を切るのにちょうどよい
混み合った枝の隙間に刃が入ります。
 

紫陽花用のノコギリという名目で売っていないので、何を買ったらよいのかお困りの方は、こちらのノコギリをご紹介します!薔薇用のノコギリなのですが、使い勝手がよくて紫陽花の剪定でも使っています。

 

 

紫陽花がキレイに咲くように強剪定ができるといいですね。
剪定は慣れなので、実践あるのみです。
おしまーい。

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